【完結&7.2周年】記念コメント(初代プロデューサー 宮前さん)
『メギド72』完結と7.2周年を記念して、関係者から寄せられたメッセージを公開します。
2025/03/03 17:00
『メギド72』完結と7.2周年を記念して、関係者から寄せられたメッセージを公開します。
第3回は初代プロデューサーの宮前さんからのメッセージです。
第3回は初代プロデューサーの宮前さんからのメッセージです。
- 目次
- 第1回
- アートディレクター 米倉さん
- 分析官 早川さん
- 第2回
- ゲームライター タダツグさん
- シシララTV ウマオさん
- 第3回
- 初代プロデューサー 宮前さん
初代プロデューサー 宮前さんより
いつもメギド72をプレイしていただきありがとうございます。
初代プロデューサーの宮前です。
7.2周年として、私にとってのメギド72を振り返るというか、誕生までを中心とした思い出をちょっと書き連ねてみますね。
起きた事実も、視点によっては感じ方が変わるもので、また、思い出はいつも美化されるもの。
そういった部分も含め宮前の視点となりますが、ご留意ください。
あまり話してこなかったリリース前の話を中心に振り返りたいと思います。
私がDeNAにジョインしたのは2014年12月。もう10年前ですね。
前職のエイチームでもポジションがあったこともあり、7人の面接官と会っての入社。
モバイルゲームの運営経験もあったこともあり、社内文化に慣れるための「既存PJへの配属」はなく、当時では異例となる最初から新規タイトル担当でした。
もらったミッションとしては、当時サービスをしていた『マジック&カノン』を制作したメディア・ビジョンともう1本制作するので、このタイトルをやってほしいと。
また、他タイトルでゲーム事業では収益があったこともあり、利益率、額よりも「面白い」という評判をつくって欲しいというのが当時の上司からの要望でした。
ソロモンと72柱の悪魔をテーマに厨ニ感あるRPGを作るという考えは既にあり、そこにプロデューサーとして入っていくことに…。
最初にやったのは、ちゃぶ台返し。
既存のアセットを使ったプロトタイプ的なものはありましたが、一からの作り直しを選択。
というのも、初期にメインスタッフとなる方たちと面談し、キャラクターやストーリー、世界観など短期的な体験には意識があるが、長期的なゲーム体験が可能なシステムをどうつくるかの意識が弱いと感じ、また、そのプロトタイプも戦略性の幅がでず、レベル上げによるインフレで敵を倒すことになりそうなゲーム性でした。
ただ、私にもゴールが見えていたわけではなく、「現状では長期運営にむかない」という考えだけだったので、ここからが大変でした。
まずは、ゲーム全体の遊びをベーシックにまとめた数十ページの概要書を早急にまとめ、方向性を一旦提示。
私もメディア・ビジョンさんの社内に席と入社カードをもらい、福島社長からは「自分の会社だと思っていいよ」って言ってもらえました。
週4でMV社に出社し、朝礼にも参加させてもらい、ランチや飲み会なども行いながら距離感をつくり、企画の細部を決めていきました。
そんな中、最初に作っていったのがメギドを球の中にシンボリック表現したバトル。
ソロモンにバトル中に加算されるエネルギーを集中させ、どのメギドの奥義をどのタイミングで差配するか決めるもの。
また、前衛、中衛、後衛のポジションでリスク・リターンをつくり、メギドたちにもクラスをもたすことで、戦略性を出すものにしました。
メギドを球に見立てたのは、予算と制作期間の問題。
着任し、特に信用があったわけではないと自身について判断していた私は、会社から指定された時期と予算を守ることを重視しました。
チーム内でも、この見た目でいいのか?といった声も多かったし、私はあえて「見た目なんてすぐ慣れる」って態度をとっておりました。
当時のディレクターの宍倉さんが「球なりにおもしろいゲームにしよう」と言ってくれたのは心強かったです。
この時苦労したのは状態の表現や戦況の把握。
本来キャラクターの見た目(表情やモーション)でHPや状態異常を表現できますが、シンボルだとそこが難しい…。
球体の表面のヒビなど試行錯誤でいかに直感的に戦場のコントロールを行える思考になるかを作り上げました。
余談ですが、この球体表現が先にあり、ゲーム内で貯めるエネルギーを何と言うかで「フォトン」にしようとなりました。
当初は「メギドオーダー」という名称で商標登録を行いましたが、似た名前の他社タイトルもあり、変更に。
悩みに悩んで「メギド72」へ。
「何その名前…」って声もありましたが、多少聞き馴染みが無い方が埋もれないとも思っての選択でした。
大凡形にできてきたこともあり、オープンベータテストをすることに。
継続率を重視することを定め、実施したところ、意外と悪くない結果でした。
ゲーム性としては面白さを作れたのだと思います。
ただ、DeNA社内からも、プレイヤーの方からも「なぜ球なの?」って声に。
メディア・ビジョンさんからも「3D化しましょうよ!メディア・ビジョンの強みは3Dです!」って言ってくれ、私が決めかねているとサンプルをすぐに作ってくれ、背中を押してくれました。
これらを武器に会社側にもキャラを具現化して作らせてほしいと予算交渉。
周囲からは、どんだけ時間と金を使うんだって声もあがりましたが、当時の上司は「おもしろいと思えるものに仕上げなさい」って言ってくれ…。
キャラを3D化し量産するなら、バトルについても、キャラの個性がしっかりでるシステムにしようと意見がでました。
スタッフの情熱と周囲の理解が状況を動かしてくれました。
思考性のあるバトルが楽しく、育てたキャラの個性がでるシステムを目指し、カードゲームのような遊び感をRPGとして体感させようとなりました。
ターン制のバトルがいいというのは当時のコアスタッフ内で意見がまとまっていました。
そこで、ターン制のコマンドバトルのコマンドをピックしあうことで、バトルが成立する仕組みをプランナーがアイデアとして出してくれました。
ペーパープロトタイプをつくり、エクセルでダメージ計算表をつくって会議室のホワイトボードにルールを書きながらテストプレイを実施。
このテストプレイでの手応えは忘れませんね。
ドラフトフォトンシステムの誕生です。
そのコマンドをフォトンとして表現することにし、世界観との一致も図りました。
特許出願をしましたが、担当のミスでディレクターの「宍倉」さんが「穴倉」さんになってしまったのを謝り倒したのもいい思い出です。
3Dグラフィックについても、当時は今みたいなアニメ表現のシェーダーが豊富ではない時代。
既存にある一般的なシェーダーではなく、独自に線のアウトラインがでる仕組みをつくり、メギドならではの3D表現をしてくれました。
奥義表現も初期はただエフェクトでメギド体になるといったもの。
なんかつまらないとなり、映像会社の監督に相談し、10体分の絵コンテを作成。
それを演出として組み上げ、そこからはメディア・ビジョンのスタッフで作成してくれました。
彼らもアイデアが洗練される一方で、奥義演出やモーションがリッチ化していく中で長くなることもあり、このことでディレクターと揉めたこともしばしば。
私は適切に遊べる長さがあると短縮を主張し、彼はスタッフと作り上げたもののリテイクを拒むという構図です。
また3Dが良くなることで、2Dのイラストが物足りないとなり、当時のイラスト担当だった高木さんにも大量の描き直しを指示しました。
みんなのこだわりとプライドが相乗効果となってビジュアルクオリティを上げていきました。
世界観についてもメインライターの木場さんとはよく話をしました。
彼はこちらのやりたいことを聞き出しながら、ロジカルに成立させつつ、ストーリーの展開としての魅力を作り出す人。
人の感情や心理的な動機、戦略性などを考えながら、このゲームの話を組み上げてくれました。
私が伝えていたのは、キューバ危機のような緊張感のなかで戦いに巻き込まれる人、その中にある人の日常や生活を感じられるもの。
JUMP漫画にあるような突如事態に巻き込まれ、その中で成長していく少年の物語。
水滸伝のような群像劇で、各キャラの魅力を引き立てる話にして欲しいと伝えておりました。
初期はシナリオとしての面白さよりもゲームテンポを取り、タップ数を制限すること。
3章を超えたら、ある程度読む人、お話が好きな人に向けたものにしてほしいと。
悪魔の世界のメギドラルと天使の世界のハルマニア。この巨大な力をもつ2つの世界の対立に挟まれた人間の世界のヴァイガルド。
このヴァイガルドにヴィータの姿で追放されたメギドたちと、彼を使役でき、ハルマゲドンを防ぐために戦うソロモンの話。
ここまでは初期段階でなんとなくあったのですが、それ以外は決まっていない。
なぜ、72の悪魔はヴァイガルドに追放され、ヴィータとして転生したのか、ソロモンはなぜ彼らを使役できるのか。
そもそもなぜ、ハルマゲドンが起きそうなのか?
そこにフォトンを巡る彼らの生態や思惑を作り出し、世界観の肉付けをしてくれました。
ある時、なぜ幻獣はヴィータを襲うのか?という話になり、ヴィータの体にもフォトンがあり、それを狙うってことにしたら。
そもそもフォトンは水のようなこの世界の必須な物質とし、それを巡る戦いとかー。みたいな会話をし、発展させてもらいました。
ヴァイガルドにはフォトンが潤沢にあるので、文明としては中世レベルだが、経済的には安定しており、平和な世界。
平和だから宗教などはあまり発展しないって考えがあったところに、それを知らないディレクターが監修したフォルネウスのキャラストーリーが出てきたことで、終末思想があると新興宗教は出てくるなどという設定も増えていきました。
メインストーリー以外でもシリアスなもの、ハートフルな話からコメディタッチなものなどバラエティある話を作ってほしいとリクエストしておりましたが、印象的だったのはジズの話。
リリース後の話ではありますが、反響があり、手応えもあったので、こういった話も入れていこうとライターさんと話をしました。
また、修正したものもあります。
シバがソロモンの子どもを産む覚悟があることを表すシーンがあり、シバが若くして自分の役割、立場を意識していることに対し、ドギマギするソロモン。
思春期の精神年齢が女性の方が高いことも含め、すごく印象的なシーンだったのですが、刺激的で反響が想定できず…、苦渋の決断で変えてもらいました。
ライターさんが生み出すセリフの数々が、各メギドやキャラクターたちの魅力を成立させてくれたと思っています。
販促素材やメギドミー章など大凡のプロットを私が書くのですが、それをライターがよりメギドらしくしてくれました。
コミケのどら焼きも「ソロモン様を全国に知らしめるコラフラメルの活動」として仕上げ、どら焼きを見たモラクスが「アニキ!」って言うところは、私のお気に入りでしたね。
カスタマーサポートに寄せられたメギドに向けた手紙への返事なども、できる時は各メギドからのコメントとして作成してお返し、メギドたちが世界にいることを意識させてくれました。
ベヒモスイベント作成のころからイベント担当をしてくれた中川さんがジョインし、メインとイベントが安定して出せるようになり、ストーリーにも幅が出たと感じたのを覚えております。
先日、終章を書き終えた木場さん、中川さんそれぞれとお会いし、また機会があれば何かやりたいねと話をしました。
音楽の話になりますが、オープニングアニメとメインミュージックについては、かなり初期に制作しました。
アニメをつくるにあたり、音楽がないと作れないこともありこちらを先に発注。
「メギド言えるかな」をテーマに、かっこいいダンスミュージック風にしてほしいと依頼しました。
コンペ形式でビクターさんが制作してくれ、候補の中から私が独断で選び、電子音と低音を強くしてくれと要望しました。
歌手の方は普段はロックを歌っている方で、ご自身の曲調と違うこともあり、ご相談の上でお名前は伏せることになりました。
それ以外はBGMだけでなく、キャラソンも含め、寄崎さんが担当。
フォカロルの戦術指南の曲までは、私が担当している間に作成してもらっていました。
ただ、歌に力を入れ始めたのは運営フェーズに入ってから。
リリース前から音楽はすごくよかったのですが、初期に作ってくれた音楽はファンタジーRPGによった印象でした。
もう少しJAZZっぽい雰囲気という要望を出すとコーラスなどが入り、アジトのテーマになりました。
リリース前後の宣伝方針については、当初から「ゲームの独自性をどうアピールするか」が大きな課題でした。
十分な宣伝予算が確保しづらい時期もあり、当初は認知活動をどう進めるか模索しておりました。
福島社長に相談したところ、ソニーの宣伝担当の方を紹介していただき、その方と電撃PlayStationの編集長にもプレゼンする機会をもらえました。
そして、異例となるスマホゲームとして電撃PlayStationに掲載してもらうえることに。
こうしたご支援のおかげで少しずつ認知が広がっていき、最終的にはTVCMなど大きな展開にもつなげることができました。
ちなみに最初のCMでは、ラストに全メギド体が並ぶカットを入れたのですが、「カイムがいない?」とユーザーの方からご指摘が。
チーム内でも「カイム皆無疑惑」と騒然となったものの、CM制作の方がきちんと確認用データを作ってくれ、「ちゃんと映ってますよ!」とお返事できたのもいい思い出です。
いやぁ…、制作側の秘話は、語り尽くせないですね。
とにかく、繰り返しになりますが多くの人の熱量とこだわりがあり、このゲームは誕生しました。
もちろん、運営を続ける中では嬉しいことばかりではありませんでした。
自分の未熟さを痛感した場面も多く、もっと慎重に判断すべきだったと振り返る事柄もあります。
「まずはプレイヤーの皆さんを安心させたい」という思いから、社内手続きを通さずに補填対応に踏み切り、後から怒られてたこともありました。
今思えばもう少し周囲と連携して進める余地がたくさんありました。
結果的に多くの皆さんにご迷惑をおかけしましたが、その後につなげられたのは多くの関係者の支えのおかげです。
ホビージャパンさんとご一緒に作り上げたボードゲーム「THE Foton」は、試作を重ねて無事に完成しましたが、コロナ渦で初期の想定どおりのお届けができなかったのは残念でした。
また、ブネが妻と子を家に残し旅立つ話も皆さんにお届けできなかったのも心残りです。
振り返ると、私自身もっと広い視点やノウハウを持っていれば、タイトルの魅力をさらに多くの方に届けられたかもしれません。
当時の良さを活かしつつ、もっと遊びやすい仕組みや展開を目指せたのではと、今でも思うことがあります。
そうした部分では、プロデューサーとしてまだまだ未熟だったと感じています。
それでも、このタイトルを通じて多くの方と出会い、仕事ができたことが私にとっての心の財産です。
また、マーケ担当者に依頼され、当初は「文章を書くなんて…」って思いつつ始めたPレターですが、まさか私がこんなに文章を書く人間だと自分自身も思いませんでした。
こんな経験をさせてくれたのも、スタッフや協力いただいた関係者の皆さん、そして遊んでくれた全ての方のおかげです。
何より、引き継いでこのタイトルを完結まで持っていってくれたカンノさんには特に感謝しております。
またどこかで、このタイトルに関われる日がくることを望み、今ある仕事を頑張っていきます。
皆さんの中にメギド72が記憶のどこかで残り続けてくれると関係者の一人として嬉しく思います。
私を成長させてくれた大切な存在。
ありがとうメギド72。
宮前 公彦
初代プロデューサーの宮前です。
7.2周年として、私にとってのメギド72を振り返るというか、誕生までを中心とした思い出をちょっと書き連ねてみますね。
起きた事実も、視点によっては感じ方が変わるもので、また、思い出はいつも美化されるもの。
そういった部分も含め宮前の視点となりますが、ご留意ください。
あまり話してこなかったリリース前の話を中心に振り返りたいと思います。
私がDeNAにジョインしたのは2014年12月。もう10年前ですね。
前職のエイチームでもポジションがあったこともあり、7人の面接官と会っての入社。
モバイルゲームの運営経験もあったこともあり、社内文化に慣れるための「既存PJへの配属」はなく、当時では異例となる最初から新規タイトル担当でした。
もらったミッションとしては、当時サービスをしていた『マジック&カノン』を制作したメディア・ビジョンともう1本制作するので、このタイトルをやってほしいと。
また、他タイトルでゲーム事業では収益があったこともあり、利益率、額よりも「面白い」という評判をつくって欲しいというのが当時の上司からの要望でした。
ソロモンと72柱の悪魔をテーマに厨ニ感あるRPGを作るという考えは既にあり、そこにプロデューサーとして入っていくことに…。
最初にやったのは、ちゃぶ台返し。
既存のアセットを使ったプロトタイプ的なものはありましたが、一からの作り直しを選択。
というのも、初期にメインスタッフとなる方たちと面談し、キャラクターやストーリー、世界観など短期的な体験には意識があるが、長期的なゲーム体験が可能なシステムをどうつくるかの意識が弱いと感じ、また、そのプロトタイプも戦略性の幅がでず、レベル上げによるインフレで敵を倒すことになりそうなゲーム性でした。
ただ、私にもゴールが見えていたわけではなく、「現状では長期運営にむかない」という考えだけだったので、ここからが大変でした。
まずは、ゲーム全体の遊びをベーシックにまとめた数十ページの概要書を早急にまとめ、方向性を一旦提示。
私もメディア・ビジョンさんの社内に席と入社カードをもらい、福島社長からは「自分の会社だと思っていいよ」って言ってもらえました。
週4でMV社に出社し、朝礼にも参加させてもらい、ランチや飲み会なども行いながら距離感をつくり、企画の細部を決めていきました。
そんな中、最初に作っていったのがメギドを球の中にシンボリック表現したバトル。
ソロモンにバトル中に加算されるエネルギーを集中させ、どのメギドの奥義をどのタイミングで差配するか決めるもの。
また、前衛、中衛、後衛のポジションでリスク・リターンをつくり、メギドたちにもクラスをもたすことで、戦略性を出すものにしました。
メギドを球に見立てたのは、予算と制作期間の問題。
着任し、特に信用があったわけではないと自身について判断していた私は、会社から指定された時期と予算を守ることを重視しました。
チーム内でも、この見た目でいいのか?といった声も多かったし、私はあえて「見た目なんてすぐ慣れる」って態度をとっておりました。
当時のディレクターの宍倉さんが「球なりにおもしろいゲームにしよう」と言ってくれたのは心強かったです。
この時苦労したのは状態の表現や戦況の把握。
本来キャラクターの見た目(表情やモーション)でHPや状態異常を表現できますが、シンボルだとそこが難しい…。
球体の表面のヒビなど試行錯誤でいかに直感的に戦場のコントロールを行える思考になるかを作り上げました。
余談ですが、この球体表現が先にあり、ゲーム内で貯めるエネルギーを何と言うかで「フォトン」にしようとなりました。
当初は「メギドオーダー」という名称で商標登録を行いましたが、似た名前の他社タイトルもあり、変更に。
悩みに悩んで「メギド72」へ。
「何その名前…」って声もありましたが、多少聞き馴染みが無い方が埋もれないとも思っての選択でした。
大凡形にできてきたこともあり、オープンベータテストをすることに。
継続率を重視することを定め、実施したところ、意外と悪くない結果でした。
ゲーム性としては面白さを作れたのだと思います。
ただ、DeNA社内からも、プレイヤーの方からも「なぜ球なの?」って声に。
メディア・ビジョンさんからも「3D化しましょうよ!メディア・ビジョンの強みは3Dです!」って言ってくれ、私が決めかねているとサンプルをすぐに作ってくれ、背中を押してくれました。
これらを武器に会社側にもキャラを具現化して作らせてほしいと予算交渉。
周囲からは、どんだけ時間と金を使うんだって声もあがりましたが、当時の上司は「おもしろいと思えるものに仕上げなさい」って言ってくれ…。
キャラを3D化し量産するなら、バトルについても、キャラの個性がしっかりでるシステムにしようと意見がでました。
スタッフの情熱と周囲の理解が状況を動かしてくれました。
思考性のあるバトルが楽しく、育てたキャラの個性がでるシステムを目指し、カードゲームのような遊び感をRPGとして体感させようとなりました。
ターン制のバトルがいいというのは当時のコアスタッフ内で意見がまとまっていました。
そこで、ターン制のコマンドバトルのコマンドをピックしあうことで、バトルが成立する仕組みをプランナーがアイデアとして出してくれました。
ペーパープロトタイプをつくり、エクセルでダメージ計算表をつくって会議室のホワイトボードにルールを書きながらテストプレイを実施。
このテストプレイでの手応えは忘れませんね。
ドラフトフォトンシステムの誕生です。
そのコマンドをフォトンとして表現することにし、世界観との一致も図りました。
特許出願をしましたが、担当のミスでディレクターの「宍倉」さんが「穴倉」さんになってしまったのを謝り倒したのもいい思い出です。
3Dグラフィックについても、当時は今みたいなアニメ表現のシェーダーが豊富ではない時代。
既存にある一般的なシェーダーではなく、独自に線のアウトラインがでる仕組みをつくり、メギドならではの3D表現をしてくれました。
奥義表現も初期はただエフェクトでメギド体になるといったもの。
なんかつまらないとなり、映像会社の監督に相談し、10体分の絵コンテを作成。
それを演出として組み上げ、そこからはメディア・ビジョンのスタッフで作成してくれました。
彼らもアイデアが洗練される一方で、奥義演出やモーションがリッチ化していく中で長くなることもあり、このことでディレクターと揉めたこともしばしば。
私は適切に遊べる長さがあると短縮を主張し、彼はスタッフと作り上げたもののリテイクを拒むという構図です。
また3Dが良くなることで、2Dのイラストが物足りないとなり、当時のイラスト担当だった高木さんにも大量の描き直しを指示しました。
みんなのこだわりとプライドが相乗効果となってビジュアルクオリティを上げていきました。
世界観についてもメインライターの木場さんとはよく話をしました。
彼はこちらのやりたいことを聞き出しながら、ロジカルに成立させつつ、ストーリーの展開としての魅力を作り出す人。
人の感情や心理的な動機、戦略性などを考えながら、このゲームの話を組み上げてくれました。
私が伝えていたのは、キューバ危機のような緊張感のなかで戦いに巻き込まれる人、その中にある人の日常や生活を感じられるもの。
JUMP漫画にあるような突如事態に巻き込まれ、その中で成長していく少年の物語。
水滸伝のような群像劇で、各キャラの魅力を引き立てる話にして欲しいと伝えておりました。
初期はシナリオとしての面白さよりもゲームテンポを取り、タップ数を制限すること。
3章を超えたら、ある程度読む人、お話が好きな人に向けたものにしてほしいと。
悪魔の世界のメギドラルと天使の世界のハルマニア。この巨大な力をもつ2つの世界の対立に挟まれた人間の世界のヴァイガルド。
このヴァイガルドにヴィータの姿で追放されたメギドたちと、彼を使役でき、ハルマゲドンを防ぐために戦うソロモンの話。
ここまでは初期段階でなんとなくあったのですが、それ以外は決まっていない。
なぜ、72の悪魔はヴァイガルドに追放され、ヴィータとして転生したのか、ソロモンはなぜ彼らを使役できるのか。
そもそもなぜ、ハルマゲドンが起きそうなのか?
そこにフォトンを巡る彼らの生態や思惑を作り出し、世界観の肉付けをしてくれました。
ある時、なぜ幻獣はヴィータを襲うのか?という話になり、ヴィータの体にもフォトンがあり、それを狙うってことにしたら。
そもそもフォトンは水のようなこの世界の必須な物質とし、それを巡る戦いとかー。みたいな会話をし、発展させてもらいました。
ヴァイガルドにはフォトンが潤沢にあるので、文明としては中世レベルだが、経済的には安定しており、平和な世界。
平和だから宗教などはあまり発展しないって考えがあったところに、それを知らないディレクターが監修したフォルネウスのキャラストーリーが出てきたことで、終末思想があると新興宗教は出てくるなどという設定も増えていきました。
メインストーリー以外でもシリアスなもの、ハートフルな話からコメディタッチなものなどバラエティある話を作ってほしいとリクエストしておりましたが、印象的だったのはジズの話。
リリース後の話ではありますが、反響があり、手応えもあったので、こういった話も入れていこうとライターさんと話をしました。
また、修正したものもあります。
シバがソロモンの子どもを産む覚悟があることを表すシーンがあり、シバが若くして自分の役割、立場を意識していることに対し、ドギマギするソロモン。
思春期の精神年齢が女性の方が高いことも含め、すごく印象的なシーンだったのですが、刺激的で反響が想定できず…、苦渋の決断で変えてもらいました。
ライターさんが生み出すセリフの数々が、各メギドやキャラクターたちの魅力を成立させてくれたと思っています。
販促素材やメギドミー章など大凡のプロットを私が書くのですが、それをライターがよりメギドらしくしてくれました。
コミケのどら焼きも「ソロモン様を全国に知らしめるコラフラメルの活動」として仕上げ、どら焼きを見たモラクスが「アニキ!」って言うところは、私のお気に入りでしたね。
カスタマーサポートに寄せられたメギドに向けた手紙への返事なども、できる時は各メギドからのコメントとして作成してお返し、メギドたちが世界にいることを意識させてくれました。
ベヒモスイベント作成のころからイベント担当をしてくれた中川さんがジョインし、メインとイベントが安定して出せるようになり、ストーリーにも幅が出たと感じたのを覚えております。
先日、終章を書き終えた木場さん、中川さんそれぞれとお会いし、また機会があれば何かやりたいねと話をしました。
音楽の話になりますが、オープニングアニメとメインミュージックについては、かなり初期に制作しました。
アニメをつくるにあたり、音楽がないと作れないこともありこちらを先に発注。
「メギド言えるかな」をテーマに、かっこいいダンスミュージック風にしてほしいと依頼しました。
コンペ形式でビクターさんが制作してくれ、候補の中から私が独断で選び、電子音と低音を強くしてくれと要望しました。
歌手の方は普段はロックを歌っている方で、ご自身の曲調と違うこともあり、ご相談の上でお名前は伏せることになりました。
それ以外はBGMだけでなく、キャラソンも含め、寄崎さんが担当。
フォカロルの戦術指南の曲までは、私が担当している間に作成してもらっていました。
ただ、歌に力を入れ始めたのは運営フェーズに入ってから。
リリース前から音楽はすごくよかったのですが、初期に作ってくれた音楽はファンタジーRPGによった印象でした。
もう少しJAZZっぽい雰囲気という要望を出すとコーラスなどが入り、アジトのテーマになりました。
リリース前後の宣伝方針については、当初から「ゲームの独自性をどうアピールするか」が大きな課題でした。
十分な宣伝予算が確保しづらい時期もあり、当初は認知活動をどう進めるか模索しておりました。
福島社長に相談したところ、ソニーの宣伝担当の方を紹介していただき、その方と電撃PlayStationの編集長にもプレゼンする機会をもらえました。
そして、異例となるスマホゲームとして電撃PlayStationに掲載してもらうえることに。
こうしたご支援のおかげで少しずつ認知が広がっていき、最終的にはTVCMなど大きな展開にもつなげることができました。
ちなみに最初のCMでは、ラストに全メギド体が並ぶカットを入れたのですが、「カイムがいない?」とユーザーの方からご指摘が。
チーム内でも「カイム皆無疑惑」と騒然となったものの、CM制作の方がきちんと確認用データを作ってくれ、「ちゃんと映ってますよ!」とお返事できたのもいい思い出です。
いやぁ…、制作側の秘話は、語り尽くせないですね。
とにかく、繰り返しになりますが多くの人の熱量とこだわりがあり、このゲームは誕生しました。
もちろん、運営を続ける中では嬉しいことばかりではありませんでした。
自分の未熟さを痛感した場面も多く、もっと慎重に判断すべきだったと振り返る事柄もあります。
「まずはプレイヤーの皆さんを安心させたい」という思いから、社内手続きを通さずに補填対応に踏み切り、後から怒られてたこともありました。
今思えばもう少し周囲と連携して進める余地がたくさんありました。
結果的に多くの皆さんにご迷惑をおかけしましたが、その後につなげられたのは多くの関係者の支えのおかげです。
ホビージャパンさんとご一緒に作り上げたボードゲーム「THE Foton」は、試作を重ねて無事に完成しましたが、コロナ渦で初期の想定どおりのお届けができなかったのは残念でした。
また、ブネが妻と子を家に残し旅立つ話も皆さんにお届けできなかったのも心残りです。
振り返ると、私自身もっと広い視点やノウハウを持っていれば、タイトルの魅力をさらに多くの方に届けられたかもしれません。
当時の良さを活かしつつ、もっと遊びやすい仕組みや展開を目指せたのではと、今でも思うことがあります。
そうした部分では、プロデューサーとしてまだまだ未熟だったと感じています。
それでも、このタイトルを通じて多くの方と出会い、仕事ができたことが私にとっての心の財産です。
また、マーケ担当者に依頼され、当初は「文章を書くなんて…」って思いつつ始めたPレターですが、まさか私がこんなに文章を書く人間だと自分自身も思いませんでした。
こんな経験をさせてくれたのも、スタッフや協力いただいた関係者の皆さん、そして遊んでくれた全ての方のおかげです。
何より、引き継いでこのタイトルを完結まで持っていってくれたカンノさんには特に感謝しております。
またどこかで、このタイトルに関われる日がくることを望み、今ある仕事を頑張っていきます。
皆さんの中にメギド72が記憶のどこかで残り続けてくれると関係者の一人として嬉しく思います。
私を成長させてくれた大切な存在。
ありがとうメギド72。
宮前 公彦
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